ONアソシエイツ アーカイヴス|ON;Associates Archives

ON;Associates Archives
- ONアソシエイツ アーカイヴス -

「ONアソシエイツ アーカイヴス」配信にあたって


《ONアソシエイツ音楽出版》は、大森昭男が1972年5月1日に設立したCM音楽制作会社である。大森は我が国のCM音楽の開祖・三木鶏郎の門下生で、同門の櫻井順が設立した《ブレーン・ジャック》から独立してこの会社を立ち上げた。社名の「ON」は、同じく鶏郎門下生で作詞家の伊藤アキラの命名で、スイッチの「ON」や、めぐみの「恩」に由来する。しかし、その一方で、大森は周囲に対して「O」は大森、「N」は同社スタッフの関口直人の「N」を指すと語っていた。関口は創業以来2005年まで在籍したディレクターで、いわば大森の右腕である。
『ON』のロゴ・デザインは、グラフィックデザイナーの松永真が手掛け、表札や社封筒、社用便箋などにも使用された。

《ONアソシエイツ音楽出版》は、高度成長期を経て発展した広告業界において常に良質な作品を制作し、その過程で若き優れた才能を見出し、数多くの作家を輩出している。同社が制作した楽曲の特徴は、常に時代の先端をゆくリッチでゴージャスなサウンドと、人々の心に響く上質なメロディと胸にしみる「ことば」(歌詞)、そして実力派ヴォーカリストによる「歌ごころ」である。これは若き日に歌手を志し、とりわけ「ことば」にこだわった大森が、もっとも大切にしていたことだ。
同社の楽曲制作に携わった作家は数多く、ざっと列記しただけでも、クニ河内、樋口康雄、大瀧詠一、坂本龍一、鈴木慶一、井上鑑、大貫妙子、矢野顕子、杉真理、大島ミチル、斎藤ネコら日本の音楽シーンに偉大な足跡を残した面々の名が並ぶ彼らが書いた楽曲は、商品価値を高めるイメージソングやキャンペーンソングを経て、やがて巷を賑わすヒット曲となった。「時間よ止まれ」「夢一夜」「ウイスキーが、お好きでしょ」を筆頭にCMから独立した楽曲として今も親しまれている名曲揃いで、録音に参加したミュージシャンは、近年世界で注目を浴びるCITY POPの名曲に関わった演奏家たち、いわばCITY POPのルーツ、あるいは表裏を成す布陣といえる。

《ONアソシエイツ音楽出版》は大森の急逝を受けて2018年4月に解散したが、現在その音源はフジパシフィックミュージックが業務の代行を引き受けており、本サイトでは、およそ3,000曲を数える《ONアソシエイツ音楽出版》が制作した楽曲のなかから、主にインストゥルメンタルを中心に、企業のブランドイメージを高めた楽曲や、これがフル尺では初披露となる幻の曲まで、今後、多種多様なスタイルの楽曲を重ねて紹介していく。

(Text : 濱田髙志)